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PROFILE <トダカ・マサフミ> 登山家・野外学校FOS主宰。87年マッキンリーに単独で登頂。以来、「ひとり」をキーワードに高所登山に挑む。96年7月29日、K2峰(8611m)無酸素登頂。97年7月エベレスト峰(8848m)遠征に出発。

戸高雅史さん


大学時代、探検部との出会いが「登山家」への道を拓いた。
 「登山家」といわれても、ピンと来ない方のほうが多いと思います。今回登場される戸高さんは、高所登山、つまり我々では考えられない8000メートル、8500メートルとう山を、酸素ボンベを持たないで、無酸素で登った日本を代表する登山家なのです。
 90年にヒマラヤのナンガパルパット峰(8125メートル)を無酸素登頂。96年には同じくヒマラヤのK2峰(8611メートル)を単独・無酸素登頂を成功させた戸高さんが、登山家を目指すきっかけとなったが、福岡教育大学に入学してからだった。
「大学のアパートを決めまして、隣に住んでいたのが探検部の先輩だったんです。“一度、部室に来い”と言われて、顔を出したら、女子の部員がやさしくしてくれまして、何をやるクラブか知らないまま“入ります”といってしまったんです」

 探検部は、川下り、洞窟探検、山を登るといっても、道がないところ登る。
「藪を掻き分け、沢や岩を渡っていく、そういう活動をするうちに、僕は山にのめり込んでいったんですね。ですから、探検部との出会いが、ひとつの運命的なものかもしれない。その中で、僕が惹かれていったのが山だったんです」


高度6000メートルの空間は、自分の細胞ひとつひとつが喜んでいるような、不思議な世界。
 そんな戸高さんは、少しずつ高所登山に興味を持ち始める。
「登山の世界には“アルピニズム”という言葉がありまして、自分の技量とか体力を高めて、より高い山、より難しいコースからというように、のめり込んでいくんです。それも若い時期はなおさらなんです。僕も同じでしたね。より高い山、より厳しい季節というか、冬であるとか雪の季節に挑戦したい。そういう段階を経て、ヒマラヤの8000メートルの方に進んでいったんです。そんな高い世界に酸素ボンベを使わない、無酸素で登るという高所登山に夢中になりまして、15年間、毎年3ヶ月から半年間は、ヒマラヤに通い続ける生活をしていました」
 その高所登山の魅力を戸高さんは、
「初めてヒマラヤにいったのが23歳のときでした。そのときに強烈に感じたものがあったんです。6000メートルの空間というのは、酸素の量が平地の約3分の1ぐらいなんですね。そういう世界にいることが、自分の細胞ひとつひとつが喜んでいるような、そんな不思議な世界なんです。その世界に引き込まれていきました」
 という。では、無酸素状態で感じるものとは、いったいどういうものなのだろうか。
戸高雅史さん「無酸素で8000メートルの世界にいるということは、人間が長い時間いられない世界なんです。平地から突然8000メートルに世界に出れば、しばらくすると脳波に異常が出るくらいの世界なんです。つまり人間が生存できない世界にいるわけなんですね。そこで感じる景色であるとか、風であるとかは、極限の状態の中で見える景色だと思うんです。それが人工的な安全策である酸素を使うと、極限に世界にいるという感覚が、少しだけ鈍ると思うんです。だから同じ景色を見ていても、感じるものが違っているんです。それは経験した人間にしかわからないでしょうね。例えば8000メートルと8500メートルでは、また大きな違いがあるんです。僕は、そこで感じるものが良くて惹かれるものがあるんでしょうね」
 そんな高所登山には、もちろん危険が背中合わせに存在する。生と死の狭間で挑戦しているといってもいい。
「ただ経験を重ねてきたこともあるんですけど、人間が持っている生存のための本能、能力。その能力というのは、ものすごいものがあると思うんです。ですから、常にその能力を働かせながら行動していると、危険な状況に入る前で、ちゃんとわかって引き返すなり、その危険を避けることができると思うんです」
戸高雅史さん

「死」を覚悟したチョモランマ単独登頂。
 それでも、戸高さんは過去に3度、雪崩れに巻き込まれたことがあるという。
「最初のヒマラヤで、若かったんでしょうね。引き返すことが自分自身で許せなかったんでしょう。そのときに2回、雪崩れに巻き込まれて、1年間、登山をやめたんです。でも1年後に、これでやめたら一生後悔するなと思い、マッキンリーに登ったんです。そこで、自分はこの世界で生きていくんだ、という確認をしたんです。それからヒマラヤの世界に入っていきました。チョモランマの北西壁という難しいコースにいったときも、7500メートルぐらいで雪崩れにあったんです。自分で雪の状態は良くないな、と感じていたんですよ。でも、周りに人がいて、それを意識し、単独で成功すれば世界初だというのもあって、だましだまし、雪を刺激しないように行ったんですが。そのときは(死を)覚悟しましたね。でも、偶然、雪が僕の前で二つに分かれたんです。それはもう、自分にチャンスを頂いたということなんです」

 次回は、高所登山のためのトレーニング方法。これから戸高さんが目指しているもの。そして、普段我々でもできるトレーニング方法などについて語って頂きます。
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