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執筆者:関東地域 訪問介護事業所 ホームヘルパーMさん



【介護コラム11月(認知症と私)】

秋も深まってきました。
前回は映画の話でしたが、今回も映画の話から始めましょうか。
歌手の雪村いづみ主演の『そうかもしれない』という映画を、
シネスイッチ銀座で先日観てきました。テレビや新聞で封切り前から
宣伝されていたので、これはもう職業病からくるものでしょうが、
認知症をテーマにした映画ということで観ておこうと思ったわけです。

 ホームヘルパーという職業に就く前、私の身近には認知症の人はおらず、
作家の丹羽文雄が認知症を患い、娘さんが介護日誌みたいな物を本にしていたような
気がしますが、読んだこともなく、それはもうあの丹羽文雄が遠い世界にいって
しまったんだな、というくらいの感覚でした。
  それがこの世界に入ると、職業として認知症の方に接することになりました。
肉親でもない、赤の他人が接するわけです。戸惑いがありましたし、いまでも
接するときはドキドキします。自分(私)を認めてくれるだろうか、ただこの一点です。
認めていただくには、どうしたらよいのだろう。誰か知らないけれど、
時々訪ねてきて身の回りの世話をしてくれる人がいる。それは、僕です。
それは、私です。
ありがたいねえー。ありがとうございます。ありがとうございます。
Aさんと僕との関係。Bさんと私との関係。そこで生まれるお互いの笑顔や、
笑いの瞬間は、同じ時間を共有できた喜びの瞬間です。勝手ですね。それは仕事だから。
短時間接するだけだから。本人の不安は、いかばかりか。家族の負担は、いかばかりか。
それでも、本人の不安が和らぎ、家族の負担が軽減される場面に、
ホームヘルパーが存在するとしたら、こんな喜びはありません。

 さて、映画『そうかもしれない』。封切りの翌日の日曜最終回、
銀座の夜に映画を観る人は少ないのか、それともテーマが重いのか、客は疎らでした。
語れるほどの映画通ではありませんが、ちょっと映画が重いな、
途中席を立とうかと腰が浮き掛けました。幸い横一列、シートには誰も座っていません。
いやいや、我慢。これから、いい展開になっていくかもしれない。
認知症を患っていく妻と老作家の物語ですが、それはそれで、現実なのでしょう。
何か救われない。「私小説」作家の物語ですから、夢のような話では
いけないのでしょう。あくまでも現実を淡々と受け止めて、追いつめられるでもなく
忍従していく老作家。お互いが終局を迎えていく姿を、まさに淡々と描写していきます。
つらい映画でした。本当はもっと楽しい夫婦生活もあったのでしょうが、
語っていません。

 もし、こんな老夫婦が全国津々浦々に沢山いるとしたら、空恐ろしい。
いや、「介護に疲れて云々・・・」というニュースが後を絶たないわけですから、
夫婦あるいは家族で抱え込んでいるのが現実です。もちろん、他人が入る余地が
どれほどあるのかはわかりません。それでも、日々私たちヘルパーが、限られた
お年寄りの方々かもしれませんが、何かの縁で同じ時間を過ごすことで、
楽しかった思い出や、希望がわいてくるのであれば、この現実も少し違った
世界になっていくような気がします。

 映画の筋書を変えるなど、失礼な話ですが、変えないとやりきれない。
この老夫婦とホームヘルパーが交流することで、老夫婦の将来も、ホームヘルパーの
将来も変わり続けていく物語。ホームヘルパーの仕事も、まんざら悪いものでもない。
そうかもしれない。



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