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市川烈先生
第1回目は、先頃福祉技術研究所を立ち上げられた市川洌先生をお迎えし、排泄に関してお話しをして頂きました。
[PROFILE] 市川洌(いちかわ・きよし)
早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、71年より東京都補装具研究所に勤務し、福祉用具の研究開発などを手がける。97年から東京都福祉機器総合センターで主任技術員をつとめ、2001年に福祉技術研究所を立ち上げる。福祉用具の選び方に関する執筆やテレビ番組出演も多い。



ポータブルトイレは、パーソナルな個人専用トイレ

 高齢者への支援を考える場合、私は、基本的に「普通の生活」をめざすべきだと考えています。排泄におきかえて考えると、「排泄はトイレで」が本来の目標です。もしも現状のトイレが使いづらいなら、使いづらくなっている要因をあげ、改造や福祉用具の活用、ご本人や介護者の動作の見直しなどによって、一つ一つ改善していくことが大切と言えます。
 とはいえ、現実には難しい問題があるのも事実です。例えば、トイレを改造するにも狭すぎる、賃貸住宅で改造ができない、福祉用具が設置できない、などの問題があります。また、介護力の不足やご本人の身体状況から、トイレまでの移動や便器への立ち座りが困難、と判断できる場合もあるでしょう。
 もう一つ考えなければならないのは、トイレはご家族が共有して使う場所だということです。お一人のための設計を突き詰めていくと、他のご家族がとても使いづらくなってしまうことがあります。そんなときに、ポータブルトイレが選択肢として浮上してくるのだと思います。
 この場合のポータブルトイレは、ご本人一人が使うためのトイレですから、パーソナルな個人専用トイレと位置づけて考えることが重要です。ご本人が排泄しやすく、便座への乗り移りもしやすくなるよう、徹底的にご本人仕様のポータブルトイレに調節できるものがいちばん望ましいといえます。
 意外と知られていないのは、排泄時の姿勢の問題です。とくに大便をする場合、私たちは無意識のうちに前屈みになっています。前屈みになると、腹圧がかかって便が出やすいからです。しかし、前屈みの姿勢をとろうとするとそのまま身体が前に崩れてしまうような高齢者の場合は、ひと工夫が必要です。
 腕の力が残っている人なら、肘掛け部分に工夫があれば姿勢を支えることもできますが、腕の力が衰え、クビの筋力も衰えてきた人の場合は、さらに姿勢保持が難しくなります。私は、丸めたクッションを抱き枕のように抱え込んでもらい、そこにクビを乗せて姿勢を安定させるような指導をしたことがあります。
 また、猫背のような姿勢になっている方の場合は、背中が背もたれに当たってしまい、その分お尻の位置が前にずれて、小便が便器に入りきらない場合があります。このあたり、メーカーさんには、さまざまな身体状況を想定した商品開発や、使い方提案を望みたいところですね。

さまざまな解決策のなかから最適なプランを

 排泄の問題については、さまざまな解決策があります。一般のトイレを使う、ポータブルトイレを使う以外にも、オムツを使う、集尿器を使う、場合によればカテーテルを使うという選択肢もあるでしょう。
 たんにモノの選択肢があるだけでなく、時と場合に応じた使い分けもあります。例えば、介護技術を持ったヘルパーさんがいる時間帯には家族共用のトイレへ誘導してもらうようにし、ご家族しかいない時間帯はポータブルトイレを使う、老々介護にならざるをえない場合はオムツで我慢するなど、支援の方法はさまざまです。
 ご本人が少しでも快適に過ごせ、ご家族の介護負担が少しでも軽減できるよう、さまざまな解決策を比較・検討し、最適なプランに作り上げていくのは、もちろんケアマネージャーの役割です。
 しかし残念なことに、ケアマネージャーの皆さんは福祉用具について必ずしも精通しているとはいえないのが現状で、豊富な選択肢があるにもかかわらず、これに気づかない場合があります。
 お風呂でいえば、「家の浴室に入れないから、施設浴しかない」と簡単に判断してしまう方が多い。実際には、リフトを使うなどしてご自宅のお風呂でゆったりお湯を楽しむ方法もあるのに、です。
 排泄の支援にもいろんな選択肢があるのですから、今一度、ケアマネージャーの方と十分に話し合い、最適なプランに見直すことも重要ではないでしょうか。

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